ブラジル式フットサル講習会

ブラジル式フットサル講習会は、ポルセイド浜田監督(Fリーグ)を務める峯山典明(フットサルB級指導員)の指導論・育成フィロソフィーを掲載しているブログです。また、ブラジルで培って来た経験談、コラムも掲載しています。Copyright(C), 2005-2022 MIRACLON ブラジル式フットサル講習会 All rights reserved. このウェブサイトで掲載されている写真・記事・内容の出典を明記しない転載・無断転載・商用の転載を禁じます。

ボールを奪いに行く勇気

某サイトにてJリーグ川崎フロンターレの稲本選手のインタビュー記事が掲載されていました。

「海外から日本に帰国してプレーしていると、どうしてもプレー面を始め、いろんな部分で物足りなさを感じてしまう。たとえば、日本やと中盤でもボールは自由に軽く持てるけど、海外やと持ったらすぐに相手にガツンと厳しく当たられる。それが世界やし、普通やったけど、日本にいるとそういう感覚を失ってしまうのが怖い。だから、自分からあえて球際に厳しく行って、忘れないようにしている。」

とあります。

さて、話をフットサルへと変えますが、

Fリーグ、社会人リーグ1部~4部、女子、育成年代と様々なカテゴリーの

試合を観る機会がある中で、

引いて守りを固めるチームの多さが気になります。

引いて守る方法にも2種類あって、ハーフラインまで引いてからボールの奪い所を決めて

ボール奪取を狙うチームと、

シュートコースを消す、ゴール前に人垣を作ってシュートを打たせないという

とにかく失点したくない一心で守るチームの2つです。

前者は引いて守ったとしても攻撃をするためにボールを奪う事を考えているので、

攻撃的なチームと言えます。

しかし、ノープランで失点したくないからただゴール前を固めてシュートを打たせない、

シュートブロックする、という守り方は守備的なチームとなります。

では、どちらがより積極的にフットボールをプレーしようという姿勢のチームと言えるでしょうか。

それは当然前者になります。

ボールを奪うために、何処で奪うか、という意図があるプレーをするからです。

引いて守って失点しないための守備は受身であり、観ている人に感動を与えられる要素が少ないと思います。

では、前述した稲本選手の話に戻しますが、なぜ海外では中盤でボールを持つと

対戦相手が体をぶつけて奪いに来て、日本だとボールを持てる余裕があるのでしょうか?

それは育成年代の指導が関係して来ます。

育成年代ではまだまだ勝利至上主義が蔓延しています。

指導しているチームが勝たなくては名前が売れない、実績にならない、

だから勝つための方法として「抜かれない」「かわされない」「数的不利にならない」

事を約束事とした守り方を指導するチームも少なくありません。

そのような指導を受けた選手・チームはどうなるかというと、ボールを持っている選手がいたら、

少し距離を縮めたら一度止まって攻撃を遅らせようとします。

飛び込むプレーは一切しません。

そうすれば自ずとボール保持者はドリブルを止めなくてはいけなくなり、

攻撃は遅れ、時間をかけるからパスコースも減ります。

結果、攻撃が停滞し、ボールを前に運べずに横パスだけを回す事になります。

チームが勝つ事だけを考えたらこれは正に正論であり、勝つためには当然、

最適な戦い方と言えます。

Jリーグの試合はこのようなゆったりとした攻撃、横パスだらけの時間だけが無意味に過ぎていく、

スピード感が得られない試合が多いと思いませんか?

だから最近はJリーグは観ていてつまらない、海外のリーグが楽しい、

といった意見が多くなっているんだと思います。

でも、「Jリーグがつまらない」という意見を持つ人でも具体的に何でつまらないのかを

説明出来る人は少ないはずです。

小学校の中学年・高学年で身に付けた事は意外と根深く、その選手のプレースタイルに関わって来ます。

フットボールを知り始めて面白い、楽しいと思いながらプレーしていた時に、

コーチ陣から「飛び込むな」「我慢しろ」「攻撃を遅らせ」と言われて育ったら、

それがずっとその選手のプレーを形成して行くのは当然と言えます。

高校生以上になってから急に「ボールを奪いに行け!」と言われても、

頭では理屈はわかっていても体が反応しません。

理由は、「ボールを奪いに行って、もし抜かれたらピンチになる。数的不利になる」

という事を一瞬考えてしまうから自然と体が拒否反応を示すように止まってしまいます。

海外ではそうではなく、若年層からボールを奪いに行く指導をさせます。

それはなぜかと言うと、ボールを奪わなければマイボールに出来ない=攻撃=得点出来ないからです。

それがフットボールです。

得点の回数を競う=ゴールを奪う=ボールを奪う

これがフットボールの原点です。

ボールを奪いに行った結果抜かれても「もう一度奪いに行けば良い」「追いかければ良い」

「何度でも奪うための挑戦をすれば良い」と考えれば、

飛び込んだ結果抜かれても、対して問題無いような気になりませんか?

※抜かれて良いというわけではありません。タイミングを見計らって、

 体をぶつけ、(腰を当て、ボールと相手選手の体の間に自分の体をねじ込む。)

 体勢を崩し、数人で囲めば問題無く奪えます。

 もちろん連動するための声かけは必須であり、何処にパスが出るか予測すれば

 より効率良くミスなくボールを狙って奪えます。

でも日本ではドリブルで抜かれたりかわされたりすると、「抜かれた!」「やばい」

「あ~抜かれちゃった~」「どうしよう」などと余計な事を考え、

その場でプレーを止めてしまう選手が非常に多いです。

このような選手が多ければボールを奪いに行って抜かれたりかわされたりする事は

マイナス要素以外の何物でもありませんから、高校生以上~プロクラブのチームを指導する監督・コーチは

「奪いに行くな」というチーム作りをするしか勝てる方法はありません。

本当はボールを奪いに行くチームを作りたい指導者は多いはずです。

ですが、手元にある選手を見渡して最低でもボールを奪える選手が10名いなければ

チームコンセプトは崩壊します。

それが元でなくなく自身の理想とは違うチーム作りをせざるを得ない状況になっているとも言えます。

国内のチームスタイル、プレースタイル、そして全体のレベルは育成年代の指導が大いに関係しています。

小さい頃にどのような指導をするかで、その後のプレースタイル、

ひいては全体のレベルにまで影響を及ぼしてしまいます。

日本が海外のクラブ・代表チームと肩を並べるには育成年代からの指導が重要です。

リーグ自体がプロ化しても急にはレベルは上がりません。

突出したスーパーな選手が1~2人いるぐらいでは強くなりません。

私も含めてですが、まだまだ海外から学ぶべき事は多いです。

大事なのはなぜ学ぶのかです。

選手はボールを奪いに行く勇気を持つ勇気を、

コーチ陣は選手にボールを奪いに行く勇気を持たせる努力をしてみませんか?