活気ある現場作り
私は練習前のストレッチやブラジル体操を行う際に、必ず全選手に「かけ声」をするように指導をしています。
単純に秒数(回数)を数えさせているだけですが、それでも「かけ声」があるか無いかで練習の雰囲気が変わってきます。
かけ声を出させる理由は「自分は練習に参加しています。」という意思表示としてで、
フットサルは団体競技ですから同じ行動を取るならば、一人一人がバラバラに行うよりも揃って行う事がチーム力アップに繋がると思います。
ですから選手にはチームに参加する以上はチーム力アップに貢献しなければいけませんから、
チームの一員である事を自覚してもらうためにもストレッチやブラジル体操での「かけ声」は選手の義務としています。
そしてもう一つ、ONとOFFの切り替えとしてです。
練習前は違う学校に通う選手同士、何か積もる話がありますから着替えながら世間話をして、
友達としての楽しい時間を共有していると思います。
しかし、そのようなリラックスし過ぎた状態で練習に臨んでしまっては当然トレーニング自体に集中する事は難しいので、大怪我をしてしまったり致命的なミスをしてプレーでチームに迷惑をかけてしまいます。
それでは何のために練習に参加をしているかわかりませんし、本人も納得出来ないと思います。
自分にとって良いトレーニングを積むためにも「これから練習を始めるぞ!」と
楽しい時間から練習へと気持ちを切り替えるために「心」の準備のためでもあります。
さて、練習前のストレッチ等でのかけ声について書きましたが、活気がある練習風景と
静かに淡々と練習メニューをこなしている練習風景、どちらが気持ち良くトレーニングに打ち込める環境でしょうか?
私は静かに淡々と練習しているよりも、選手たちが声を出して走り回っている活気溢れる練習風景が
チーム力を上げるのに良い環境だと思います。
しかし、小学生・中学生・高校生の中には内気でなかなか声を出せない選手がいるのも事実です。
その選手たちに無理矢理頭ごなしに「声を出せ!」と言っても、苦手と思う事をやらされる選手にとっては嫌な事でしかないので逆効果です。
だからと言ってそれを放置しても良いわけはなく、ここが活気溢れる練習風景に出来るか出来ないかの分かれ道となります。
選手とコーチの我慢比べです。
活気を出すには「大声」を出したりしてチーム全体が盛り上がるのが一番です。
ただ、大声で叫べば何でも良いというわけではなくて、目的の無い大声は選手個人・チーム共にレベルアップには繋がらないので意味がありません。
ではどのような大声が良いかと言えば、「仲間」そして「チーム」を盛り上げる声です。
具体例としては「ナイスシュート」「ナイスブロック」「ナイスラン」「ナイスカット」「ナイスフォロー」「サンキュー」「走れ」「戻れ」「寄せろ」「頑張れ」etc・・・でしょうか。ようするに言われて嬉しい言葉、助かる言葉です。
声をかけられて嫌な気持ちになる人はいないと思います。誰だって褒められたり励まされたら嬉しいし、
「よし、やってやろう!」と言う気持ちになるはずです。
その事を声を出すのが苦手な内気な選手に根気強く伝えていき、自主的に声を出すまで待ちます。ひたすら待ちます。待つ努力をします。コーチが我慢する!それだけでチームは活気に溢れる練習環境を手に入れられます。
余談ではありますが、この「かけ声」は選手自身の練習の質の向上にも繋がります。選手のやる気=モチベーションには【内在的】と【外在的】の二つに分けられ、自身の夢実現や目標達成のためにはレベルアップしなければいけない!そのためには全力で練習に取り組み、力をつける事が必要だ。そのために今この場にいる!練習に参加する!という気持ちを持つ事が「内在的モチベーション」であり、「外在的モチベーション」はニンジンをぶら下げる事を指します。
外在的モチベーションはどうしても欲しい物、手に入れたい物があれば即効性は強く効果もある程度は期待出来ます。
しかし、突発的な物なので持続力が無く、ニンジンを手に入れてしまった後はやる気を出すのに苦労をします。
どちらが良いか比較するまでも無いと思いますが、明らかに「内在的モチベーション」が効果大です。
自分のためにやるわけですから、一つの目標を達成しても次の新たな目標が生まれるだろうし、
スポーツの世界で頂点を極めるのは雲をつかむような話なので、上を目指す選手にとっての「やる気」は無限大です。キリがありません。
練習の質を高めるには「内在的モチベーション」は必要不可欠ですが、選手ももちろん人間ですので、体調不良や私生活の問題によってたまには「やる気」が薄れる場合もあります。
その時に大活躍するのが「空元気」です!
空元気とは元気であるかのように見せる、言わば自分に「俺(私)は元気なんだ!」と嘘をつく事です。
自己暗示です。
やる気がないならば、無理矢理やる気を出すまでです。そうしなければ練習に参加する意味もありませんし、
練習に費やした時間がもったいないです。
目の前の試合に勝ちたい、レギュラーを取りたい、プロになりたい、と思っている選手には休んでいる暇はありません。
体調不良や私生活の問題等でどんなに「やる気」が落ちていようと、練習に参加する以上は少しでも実力を伸ばさなければいけません。
レベルアップする事を考えないまま参加する練習には意味がありません。
前述しましたが、集中力の欠如によって大怪我をしたり、プレーでチームメイトに迷惑をかけてしまいます。
それならば練習を休む事をおすすめします。
私は練習に参加するならば自分に嘘をついてでも「やる気」は出さなければいけないものだと思っています。
そのために必要な物が自分の内側から「やる気」を上げて行くための「自分を盛り上げる声」です。
アップから大きな声を出しながら行動しているうちに少しずつもやもやした気持ちも晴れて来ます。
大きな声を出すと、気分が良いですよね。
最初は空元気のための声出しに乗り気では無くても、声を出しているうちに本当に自分自身が騙されて来て、
徐々に気持ちが高ぶって来ます。
数分でも大声を出し続けていれば体も良く動くような気がします。
アップが済んで本格的な練習が始まる頃には気分が不快だったのも忘れて気持ち良くプレー出来ているはずです。
ここまで持って来る事が出来れば空元気成功です!自分自身が活気に満ちあふれている状態が作れています。
チームに所属する選手全員がこのように自分自身とチームを盛り上げる事が出来れば、
その練習会場は活気ある物となるでしょう。
誰か一人でも良い意味でバカになって大声を出していれば、苦手意識を持っていた選手たちも
いつの間にかその雰囲気に取り込まれて、気づけば全員が「かけ声」を出しているようになっています。
楽しそうに声を出している選手が一人いるだけで、周りの選手はきっと引き込まれるはずです。
きっと最初は周りの選手に聞こえないぐらいの小さい声だと思います。
しかし、問題は声の大きさではなく、「盛り上げよう」と思って声を出す努力をし始めた事に意味があるはずです。
最初は小さい声でのかけ声も数ヶ月・1年経つ頃には大きくなっているのかもしれません。
その時を気長に待つ努力をしてみて下さい。
今まで抽象的に「活気がある」と書いて来ましたが、具体的にどのような物かと言うと理想はお祭りです!
御神輿をかついでいる人たちが静かにやっているでしょうか?みんな大声を出して
オーバーアクションで盛り上がっている場面を想像しませんか?
スポーツの練習風景もそれが理想のような気がします。
辞書を開くと、
【活気】=生き生きとしてくる。陽気でにぎやかな感じになる。
と出てきます。活気のあるチームと無いチーム、どちらが好きですか?と質問されて
後者と答える人は少ないはずです。
最近は真夏日が続き、炎天下の中でサッカーの練習をしたり、閉め切った蒸し蒸しした体育館でフットサルの練習をしているチームが多いと思います。
このような暑くて辛い時こそ、みんなで声を出してバカになりながら活気溢れる練習をしてみてはどうでしょうか。
活気があれば暑さが気にならないほど楽しく練習に打ち込めますよ。
声出しが苦手な選手が多いチームの方、ぜひコーチ自らが先頭に立って「チームを盛り上げる声出し」をしてみて下さい。
活気ある現場作りをしたいと思われている方の手助けになれたら幸いです。