ブラジル式フットサル講習会

ブラジル式フットサル講習会は、ポルセイド浜田監督(Fリーグ)を務める峯山典明(フットサルB級指導員)の指導論・育成フィロソフィーを掲載しているブログです。また、ブラジルで培って来た経験談、コラムも掲載しています。Copyright(C), 2005-2022 MIRACLON ブラジル式フットサル講習会 All rights reserved. このウェブサイトで掲載されている写真・記事・内容の出典を明記しない転載・無断転載・商用の転載を禁じます。

PKを楽しむ

フットボールをプレーする選手の中でどのぐらいの人がPKという特殊なプレーを楽しめているでしょうか。

 PKは「必ず得点出来る/絶対に1点もらえる」わけではありませんが、高確率で得点出来る機会であり、PKを獲得する事はチームにとって喜ばしい事です。しかし、そのPKを蹴る選手はプレーを楽しめていないような気がします。みなさんはPKを蹴った経験はありますでしょうか? PKを蹴る時、「外したらどうしよう」というマイナスなことを考えてしまった事はありませんか? 私は、PKを蹴る時には、ポジティブ思考であるべきだと思うのです。PKを決めるか外すかは、実際にボールを蹴って見なければわかりません。プレーする前から結果を気にしてしまっては全然楽しめないと思います。せっかく獲得したビッグチャンスですから楽しまなければ損です。「自分の得意なキックには自信を持っている! フットサルのPKはたった6mだ。蹴れば、きっと決められる! 1点もらった!」と思ってプレーすれば楽しむことができ、結果として、得点する確率も「ぐっ」と上がります。

 試合中にどちらかのチームがPKを獲得すると、獲得したチームは「1点もらった!」という気持ちになり、勝ったかのように喜びます。逆にPKを与えてしまった側のチームは敗戦を覚悟したかのように沈んでしまいます。まだGKが防いで失点しない可能性があるにも関わらず、チームの雰囲気がマイナスへ向かってしまうのが通常です。しかし、なぜ両チーム共にまだボールが蹴られてもいない段階から色々と余計な事を考えてしまうのでしょうか。

 PKが実際に行われて決まるか決まらないかわからない時に余計な事を考えるのは集中力の欠如に繋がりますし、一番大切なのはボールが蹴られた後にPKの結果を踏まえて何を考え、どのようにプレーするかだと思います。私は過去に指導したチームで決勝トーナメント一回戦(ベスト8)から決勝戦を含めた3試合全てをPK戦で勝った事があり、逆にPKで一本も決められずに0-3(PK)で負けた苦い経験もありますので、PKは決まる確率は高いが必ず決まるわけでは無いプレーだと言う事を痛感しています。PKが一本も成功せずに負けた時の試合での、シュートが外れた瞬間の選手の表情が今でも忘られません。シュートを外してしまった場合、外した選手とチームメイトの落胆はとても大きいです。口では「ドンマイ、気にするな、大丈夫、GKが止めてくれる」など、互いに励ます言葉をかけてはいますが、その表情はこわばっていました。悪い雰囲気は伝わるもので、どんなに盛り上げようとしても心のどこかでネガティブな考えがよぎってしまい、後のプレーに響きます。当然良い結果は得られなくなってしまいます。

 準々決勝、準決勝、決勝全てに勝った時はGKがシュートを一本止めただけで歓声が上がり、その歓声の相乗効果でチーム全体も盛り上がり、対戦相手が会場の雰囲気に飲み込まれてプレッシャーを感じたようで、勢いで勝つ事が出来ました。というように、PKはたった一つのプレーが与える影響力は大きいんです。

 同点で迎えたPK戦ですら、たった一回の失敗やセーブが与える影響は大きく、ましてこれが試合中に起きたPKであれば尚更、選手やチーム全体への影響は計り知れないと思います。もし決められれば決めた選手は当然高揚しますし、もっとやってやる!という気持ちになり、チーム全体も士気が高まり良い精神状態で残り時間を戦えます。これだけのプラス要素があれば優位に試合を運べ対戦相手の戦意を奪う事も可能になり、ぐっと勝利が近づきます。しかし、決められなければ試合展開はイーブンどころかこの先どうなるかわからないという流れになってしまいます。外した選手は失敗した事の責任から自分を責めマイナスな感情に包まれプレーに集中出来なくなってしまので、その後のプレーは精度や質が下がりミスも増えます。チーム全体としては決定的な得点機会を失い、士気が低下する事で思い切りの良いプレーが減ったり、連動性が失われチームプレーとしてのパフォーマンスもが落ちてしまいます。ただし、それだけで済めば良いのですが、対戦相手にも与える影響は大きいです。一点取られたとしてもおかしくない場面を切り抜けた事によってチームは盛り上がりプレーに積極性が見られ、「よし!まだやれる。勝てるぞ!」という雰囲気になってしまいます。チームの雰囲気が良くなる事でPK以前よりも精神状態が上向き、こちらを圧倒するかのような勢いと取り戻してしまいます。実はこれが大きな問題で、PKは試合の勝敗を左右するほどの影響力を持っています。

 この、試合を左右するほど影響力のあるPKですが、PK練習をするチームはどのぐらいあるでしょうか?フットボールの試合の事をゲームと呼ぶ事があるように、試合=ゲームは楽しむものだと思っています。ゲームは楽しむものなのですから、そのゲームの一部でもあるPKも楽しめたら素晴らしい事だと思います。

 チームや監督・コーチの指導方針もあると思いますが、私はPKを楽しむには練習が必要だと感じています。その根拠はFK練習、シュート練習を行う理由と同じです。試合は練習でやった事の「試し合い」の場だと私は思っています。様々なチーム練習は大事な試合を想定した内容になるはずです。ですからFKを獲得した時のためにFKの練習をしますし、得点するために必要なシュートも練習をします。それと全く同じ考えです。PKは一試合で行われる回数が極端に少ないですし、一回も無い試合も当然あります。しかし、試合で行われる回数が少ないもしくは「0」かもしれないという理由だけで練習しないのはもったいないとは思いませんか? 決めればリードを広げられる、外したら失うものが大きいPKです。より確実なものにしたければFK同様に練習するべきです。得意なキックを狙ったコースに蹴る! ただこれだけで十分です。練習で沢山蹴れば蹴るほど経験地は得られますし、その経験から自信にもなります。自信がつけば外す確率は下がりますから余計な心配は無用となります。よって楽しむことができます。

 PKが苦手な方へのアドバイスとして、以下を提唱します。

(1)ひたすらPKの練習をして、得意なキックを得意なコースに蹴ることを磨く。

(2)PKを蹴る時にGKを見ない。(GKを見ると余計な事を考えてしまうから。)

(3)ゴールやシュートコースも見ない。(ゴールやシュートコースを見てしまうと何処に蹴ろうか悩んでしまい、決心が鈍るから。)

(4)得意なキックを得意なコースに迷い無く、自分を信じて思い切って蹴る。

ただこれだけです。フットサルのPKはたった6mです。自信を持って楽しんで蹴れば良い結果が得られると信じています。月並みな言い方ですが、練習は嘘をつかないと思います。練習すれば練習した分だけ、見返りはありますよ。