ブラジル式フットサル講習会

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攻守が一体となったディフェンス~前プレについて~

戦術とは戦う術であり、勝利を目指す以上はチームそれぞれにあった

戦術(戦い方)というものがあります。

そしてチーム戦術は攻撃と守備の二つに分けられます。

 

チームにはそれぞれ攻め方と守り方というものがあり、 例として、攻撃に関しては自陣から繋いで行くのか、 それとも相手ゴールまで最短ルートを使うのか、 守備は攻撃のための守備(ボールを奪う・奪い返す)なのか、 それとも失点しないための守備(ゴールを守る・シュートを打たせない)なのか、 というように監督の哲学によって攻撃・守備戦術は変わります。

 

今回は守備戦術のうちの一つでもある「高い位置からのディフェンス」 について書きたいと思います。

 

「高い位置からのディフェンス」は、フットサルをプレーしている人たちの間では 「前プレ」と呼ばれることがあります。

 

「前プレ」とは、前(相手側ゴールに近いところ)からプレッシャーをかけて ボールを奪うプレーのことを言います。 このように、「前からプレッシャーをかけること」=「前プレ」 ということになるのですが、ボールをどこで奪うのかが重要になってきます。

 

ディフェンスで一番重要なのはボールの奪い所をどこに設定するか、です。 チームによってボールを奪いに行くラインは決まっています。 しかし、ここで気をつけなければいけないのが、「前プレ」=「前でボールを奪う」 とはならない、ということです。

 

相手ゴールの近くでボールを奪えれば得点チャンスに繋がるので、 誰もが相手ゴールの近くでボールを奪いたいと思うものです。 そのため、多くのチームは「前プレ」を実行する際、 相手チームのゴールクリアランス時に相手ゴール近くにいるFIXOに ぴったりとマンマークでつくことをします。

 

では、相手ゴールの近くでボールを奪いたいからと言って、 守備側のこのようなポジション取りは正解でしょうか? もし自分が攻撃側チームだったとしたら、みなさんどうされますか?

 

相手守備側の選手が自陣ゴール近くのFIXOにぴったりマークについていた場合、 恐らく多くのGKは近くのFIXOに出さずに、真ん中のスペースに下りて来たPIVOへ 楔のパスを入れるか、相手陣内へロングボールを投げるのではないでしょうか。

 

大半のチームは自陣でボールを奪われたくない(当然です)ので、 ぴったりマークがついている自陣の選手にパスを出すことはしません。 ※マークを振り切れていれば話は別です。

 

相手GKから自陣にロングボールを投げられてしまうと、 相手ゴールの近い所でボールを奪うことができなくなりますので、 本末転倒と言わざるを得ません。

 

じゃあどうするの? という話になると思うのですが、ここからが私個人の「前プレ」に対する考えです。

 

私は「前プレ」というディフェンスを実行する場合、 下記内容をポイントとしています。

 

(1)自チームの前方にいる選手は相手側コートの第二PKマーク付近まで下がり、 相手チームのGKが近くのFIXOにパスを出すようにしむける。

 

(2)GKがFIXOにパスを出すよりも前に、全員がそれぞれ自分がマークすべき選手は誰なのかを 確認し合う。

 

(3)GKが誰にパスを出すのか、どこにパスを出すのかを予測する。

 

(4)GKからFIXOへのパスを予測すると共に、腰を落として足を動かし、 GKがFIXOへパスを出した瞬間に距離を縮められるよう(プレッシャーをかける) 準備しておく。

 

(5)GKが近くのFIXOへパスを出すと同時にその選手をマークしていた選手は一気に距離を縮める。 そしてFIXOが持つボールに足が届くか届かないかギリギリの距離を保ち、急ストップすると共に 細かく足を動かし続ける。

 

(6)FIXOがトラップと同時に足を止めたら距離を更に縮めて体を寄せて楽にプレーさせない。 ※ここでボールを奪えることもある。しかし、無理して足を出してかわされることが 一番やってはいけないことなので、体を寄せて楽にプレーさせなければOK。

 

(7)FIXOがプレッシャーを受けて逃げるパスを出すので、そのパスが誰に出るのか、 どこに出るのかを全員が予測する。

 

(8)FIXOから逃げるパスが出ると同時に、そのパスが出た選手をマークしていた選手は一気に距離を縮める。 そして、その選手が持つボールに足が届くか届かないかギリギリの距離を保ち、急ストップすると共に 細かく足を動かし続ける。

 

(9)パスの受け手がトラップと同時に足を止めたら距離を更に縮めて体を寄せて楽にプレーさせない。 ※ここでボールを奪えることもある。しかし、無理して足を出してかわされることが 一番やってはいけないことなので、体を寄せて楽にプレーさせなければOK。

 

(10)ボール保持者がプレッシャーを受けて逃げるパスを出すので、そのパスが誰に出るのか、 どこに出るのかを全員が予測する。

 

(11)GKから数えてこの3つ目のパスは、恐らくワンタッチで前にクリアするような 雑なパスになることが多い。ここでボールを奪う。

以上、①~⑪がポイントになります。

 

さて、上記の①~⑪を読まれた方には気付いていただけたと思いますが、 「前プレ」=「相手陣内でボールを奪う」 ではない!ということです。

 

あくまで「前プレ」とは相手陣内からプレッシャーをかけることを指す言葉です。 相手陣内から(前から)プレッシャーをかけることでパスミスを誘発させ、 ボールを繋ぐのではなく、ボールを奪われたくないという気持ちによって プレーされた「逃げのパス」、ようするにただ蹴っただけの雑なパスを出させて パスカットを狙うプレーが「前プレ」によって実行出来ます。

 

ボールコントロール技術に乏しい選手が一番最初のプレッシャーにびびり、 その結果、1stDFがボールを奪えることもあります。 また、1stDFの寄せが良くて、次に出る逃げのパスが弱かった場合は 二人目のDFがボールを奪うこともあります。 しかし、最も確率が高く、なおかつリスク(かわされて数的不利になる)もないプレーは、 三人目もしくは四人目の所で奪うことだと思います。

 

三人目もしくは四人目の所へのパスは、自陣に向かって前に蹴られたボールになります。 その結果、自分たちの守るゴール付近にいる相手選手はゴールに向かって背を向けた 状態でプレーすることになりますので、パスの予測と奪いに行くタイミングさえ 間違えなければボールを奪うことは容易いですし、ボールを奪う際は相手ゴールを 向いた状態でパスカットすることになるので、そのまま攻撃に移ることも可能な上、 場所によってはミドルシュートも狙えます。

 

まとめると、「前プレ」とは

●相手陣内でボールを奪うことではない ●相手陣内からプレッシャーをかける ●常に次のパスを予測する ●体を寄せて雑なパスを出させる ●雑なパスを奪ってそのまま攻撃できる

正に攻守が一体になった戦い方と言えます。

いかがでしょうか?